幹事というのは、名誉ある役割である。

 自民党の幹事長を見れば、一目瞭然である。

 多くの政治家が、幹事長のポストを目指しているのは公然の秘密だ。秘密ですらないかもしれない。

  企業でも、幹事会社というのは強い。とても、強い。 

 大学生の皆さんに置き換えれば、サークルの幹事長というやつだろうか。 

 とにかく幹事というのは大変に名誉ある仕事であるからして、誰もが引き受けたいと思う素晴らしいお仕事なのだ。 

 というわけで、誰か『飲み会の幹事』やりませんかーなどと求めれば、『我こそは! 我こそは!』という一騎当千の猛者が集うはずである。 

 理論上は。  


 現実というのは不思議なもので、さっぱり集まらない。 


 飲み会の幹事というのは『きついお勤め』である。会社の飲み会を手配する新人さん、本当に乙です。

  一部の企業では、飲み会の幹事を通じて『接待の基本』やら『業務連絡のやり方』やらを習得させるんじゃ……なんて戯言もあるそうですね。風のうわさによれば、商社マンなんて『銀ブラ=店舗学習業務』だとか。 

 例えば、銀座のA店はビールが○○系列だから、B店はビールが○○系列だから……なんて神話的伝説も。後は、個室・お料理・客層・お土産・値段+口の堅さetc

 とにかく、まぁ、そういうわけで社会人になると結構面倒な手配が必要になることも往々にして。

  では、ここで問題です!

  Q:同業作家さんの飲み会を企画する場合は、どんなものでしょうか?  


 A1:すべての作家先生はとても人品共に完成されており、何一つ苦痛はありません。簡便極まりなく、誰にでもできる朝飯前の業務です。ささ、先生、一つ名誉を重ねると思って気軽にお引きうけください! 

 A2:少人数であれば、楽です。ほんとに

 A3:それは、神のみぞ知る世界……



 ぶっちゃけ、同業他者の悪口を言うと『お前だって別に、立派な聖人君子とは程遠いだろー!?』って指弾があるんで世知辛い幹事の愚痴を延々とやりましょう。 


 そう、これは、高すぎる、安っぽい、まずい、煙い、ドタキャン、その他諸々に泣く幹事の、幹事による、幹事のための愚痴である……。

 幹事の仕事は何か?

 ずばり、お店を手配する。ほんと、それだけ。


 ただし、作家先生というのは『とても面倒な参加者』である。

 ぶっちゃけていうと、人格とか性格とか以前に、『そうならざるを得ない条件』がたくさんあるのでする(´・ω・`) 

 ①予定がとてもよめない 最大の難敵、それは予定である。

例えば、東京にご在住のCZ先生を参考に見てみましょう。

CZ先生はカフェインへの信仰も篤く、人格・品性共にカフェイン級の聖人と評すべき(第三者による客観的評価)人物なのですが、『トラブル対応で行けません!』だとか『すみません、予定が変わって……』ということが往々にして発生します。


 他の先生方にも、似たようなトラブルが多々発生してしまうのです。

 例えば、20時にと仰っていたA先生が、『すみません……今日は、抜けられない……』などという悲鳴のようなメールと共に残業の闇に飲まれるなど。

 ぶっちゃけ、兼業だと本業がどうしても予定を占めます。作家仲間の飲み会があるんで、今日はお先失礼しますって言えるのは、フィクションの世界だけなんです……。


 会社の飲み会じゃないんで、会社も別に気を使ってくれない……。更に言うと、〆切り前の飲み会とかは参加が色々と(´・ω・`)  


 で、だから、予定が固まるまでお返事が……なんてことも多々。自分も良くやってしまうし、人にもよくやられてしまう例のあれ。すると人数が読めず、幹事さんが……OHブッダの世界。


②求めるものが違いすぎる 

・同業さんとおしゃべりしたい! 

・同業さんととにかく飲みたい! 

・同業さんとみんなでご飯食べたい! 

・同業さんと折角だし良いモノ食べよう! 

似ているようで、この4つ、全く異なります。つらい。 

ここに、・同期の同業さんと同窓会だ! とかも入るとカオス×カオス。


 往々にして気をつけないといけないのですが、飲み会をやるぞー! となると『どういう飲み会がいいか』というイメージが違ったりする点です。


 いや、会社とか大学のサークルだと『毎年いつものあれな』みたいな感じだったりするかもなんですが、そこまで組織化されてるわけでもないふんわりとした『同業飲み』だと『それぞれの標準』が違いすぎるんです……。


 例えば、『飲みたい』って一派。楽しくワイワイやりたいってことで、お酒重視になります。すると、お食事重視の『飲まない』って一派が『お値段の割にお料理が……』なんて。


 じゃあ、『飲み放題食べ放題つき』にすれば解決でしょ、でしょなんてやると地獄へ一直線。 


 『同業さんと気安く打ち解けたお喋りしたいのに、周りに人が多すぎる! 個室にしてくれ! じゃないと、編集さんの悪口だって外じゃ言いにくいんだぞ!?』なんて方も。 


 よし、『飲み放題食べ放題』+『個室』にします! なんてやるとですね、これはこれで全員が幸せになれるか……? ならないんだなぁ……。


 理由はシンプルで、打ち解けた内緒話できるほどの『個室』はお値段が。そして、美味しいものを食べよう……と遣ってくる一派から『幹事さん、これ、値段の割に安っぽいざんす』って文学的表現でご指摘が。あるいは、『みんなで○○するだけで、この値段は高すぎだよ』なんて。  


 分かりました、と開き直って 

・うまくて 

・個室で 

・飲み放題つき 2980! あるか? ありますよ。もちろん。私のリストには、こういう無理難題をかなえてくれる店舗がいくつかございます!

 大体、アクセスが死ぬほど厳しいか、リアルでヘビーローテーションなんで『作家カルロ』としては暖簾が潜れないかのどっちかですが。


 つまり、万人を満足させる術など皆無なのです。


 作家同業飲みにおける最大の問題は、正しく、『何を求めるの?』という物語性を皆さんが天で勝手に己のプロットで進めることにありますよ……。


 あと、昨今の流れ的にタバコ。喫煙派、禁煙派の相克も幹事的にはちょーつらいやつ。


 こうなってくるとですね、もう、『いつもの面子と飲めばよくね?』という悪魔の囁きが脳に吹き込まれるんです……。


 更に、更に、世間には『いつもの面子万歳派』にする恐るべき罠が!

 ③お口にチャック! できない子もいるんです…… 

「へー、○○先生、〆切りキツんですかー」 

「ええ、勇者文庫の〆切りをもう三日も……。でも、煮詰まっていたので皆さんと会いたくて……」 

この素敵な会話の5分後、○○先生の携帯が突如として鳴り響く。

「メッセージ? どなただろうか?」

不思議そうな顔で携帯に手を伸ばした○○先生は、凍り付く。

「ゆ、勇者文庫の編集……? バカな、奴は、私がここにいるとは……」

彼はまだ知らない! ご新規のXX先生がSNSで『憧れの○○先生と飲んでまーす!』とお漏らししてしまったことを……

※この物語はフィクションです。


 真面目な話をすると、同業作家さんの飲み会は『この場限り』というお話が結構多いです。場合によっては、当たり障りのないお話に終始することもないわけではないんですが……会を重ね、何度もお会いして戦友意識というか、仲間意識があると『信頼』の元に『オフレコ』でリアルなお話をします。


 お漏らし? マジで、やめてくれめんす……。


 なので、一部お漏らしの被害にあった先生などは『幹事さん、幹事さん、参加者は誰だい?』なんていう感じで警戒心ビンビン(´・ω・`) 


『いつもの面子だけです!』→『わーい、まったりやろうね』

『新しい方を!』→『……どーゆー方でする?』

 なんて流れも、時と場合によっては。つらい。


 信用と信頼を裏切ってはいけない。これ、大事。んで、そういう会に声かけてくれる幹事さんには、アルティメット感謝である。そーゆー訳なんで、幹事さんというのは大変だ。いつも、ありがとうございます……。


 でもね、でもね、飲み会を通じて同業さんとであるのは本当に楽しいです。励みにもなりますい。一緒にやっている仲間と飲むのは、やっぱり、楽しいですよ……(`・ω・´)


 つらい、でも、楽しい。


 というわけで、そろそろ作家軽飯新年会をやりましょう。月末とか目途に。 


2018/01/16 カルロ・ゼン

作家軽飯

カルロ・ゼン+蝉川夏哉+津田彷徨

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